結論

退職金、企業年金、iDeCoは、同じ老後資金でも制度や受取方法によって税務上の扱いが異なります。まずは、何を、いつ、どの方法で受け取る予定かを分けて整理することが大切です。

一時金で受け取るか、年金で受け取るか、複数の退職手当等を同じ年または近い時期に受け取るかによって、確認すべき項目が変わります。この記事は、受取方法の最適解や税額を確定するものではなく、事前に確認したい項目を整理するためのものです。

まず3つを分けて整理する

退職前後には、会社の退職金、企業年金、iDeCoなど、複数の資産を受け取る場合があります。これらをひとまとめにして考えると、受取時期や税務上の扱いを見落としやすくなります。

まずは、会社から支払われる退職金、加入している企業年金、iDeCoの老齢給付金を分けて整理してください。さらに、それぞれについて、一時金で受け取るのか、年金で受け取るのか、組み合わせるのかを確認します。

企業年金は制度や規約によって受取方法や税務上の扱いが異なる場合があります。制度名や規約を確認せずに、一律に判断しないでください。

  • 会社の退職金
  • 確定給付企業年金などの企業年金
  • iDeCoの老齢給付金
  • 受け取る年
  • 一時金、年金、併用などの受取方法
  • 過去に受け取った退職手当等の有無

iDeCoの受け取り方

iDeCoの老齢給付金は、原則として受給権が発生してから75歳になるまでの間に請求できます。60歳から受け取るには、60歳になるまでに確定拠出年金の通算加入者等期間が10年以上あることが一つの要件です。

通算加入者等期間が10年に満たない場合は、受給可能となる年齢が60歳より後になる場合があります。また、60歳以上で初めてiDeCoに加入した場合は、加入から5年を経過した日から受給できる場合があります。

受け取り方には、年金として受け取る方法、一時金として受け取る方法、一時金と年金を組み合わせる方法があります。ただし、組み合わせの可否や具体的な方法は運営管理機関によって異なる場合があるため、加入先で確認してください。

一時金と年金では税制上の扱いが違う

iDeCoを年金として受け取る場合は、公的年金等控除の対象になります。一時金として受け取る場合は、退職所得控除の対象になります。

会社の退職金など、退職に基因して一時に支払われる一定の退職手当等は、退職所得として扱われます。

どちらが有利かは、他の年金収入、退職金の金額、勤続期間、過去の退職手当等、受け取る時期などによって変わります。一時金の方が得、年金の方が得と一律に決めないでください。

退職所得控除の基本

退職所得を考えるときは、退職所得控除額を確認します。一般的な退職所得控除額は、勤続年数に応じて計算されます。

勤続年数が20年以下の場合は、40万円に勤続年数を掛けた金額です。ただし、計算結果が80万円未満の場合は80万円となります。

勤続年数が20年を超える場合は、800万円に、70万円に20年を超える勤続年数を掛けた金額を加えて計算します。

ただし、過去または同じ年に他の退職手当等を受け取っている場合などは、この式だけで税額や控除額を確定できません。退職所得控除の重複期間調整が関係する場合があります。

  • 勤続年数20年以下:40万円 × 勤続年数
  • 上記の計算結果が80万円未満の場合:80万円
  • 勤続年数20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数-20年)
  • 過去または同年に他の退職手当等がある場合は別途確認が必要

2026年から確認したい9年ルール

2026年分以後の所得税では、確定拠出年金法の老齢給付金として支給される一時金、いわゆる老齢一時金を先に受け取り、その後に別の退職手当等を受ける場合の確認範囲に重要な変更があります。

一定のケースでは、その年の前年以前9年内に受け取った老齢一時金が、退職所得控除の重複期間調整の対象となります。

そのため、iDeCoを先に受ければ10年空ければ必ず問題ない、と単純に判断しないでください。実際には、受け取った年、老齢一時金の対象期間、後から受ける退職手当等の勤続期間、重複する期間などを確認する必要があります。

退職金を先に受けた場合の19年ルール

逆方向、つまり先に会社の退職金などの退職手当等を受け取り、その後に確定拠出年金の老齢一時金を受ける場合にも注意が必要です。

この場合、一定のケースでは、その年の前年以前19年内に受け取った退職手当等が、退職所得控除の重複期間調整の対象となる場合があります。

会社の退職金を先に受ければ19年空ければ必ず問題ない、と単純化しないでください。どの退職手当等を、いつ、どの期間に基づいて受け取ったかによって扱いが変わります。

同じ年に複数の退職金等を受ける場合

同じ年に2か所以上から退職手当等を受ける場合にも注意が必要です。支払者が源泉徴収税額を計算するときに、他の支払者から受けた退職手当等を含めて計算するケースがあります。

たとえば、会社の退職金、企業年金の一時金、iDeCoの一時金など複数の退職手当等を受け取る場合は、同じ年に受け取るケースだけでなく、過去に受け取った退職手当等との期間の重複についても確認が必要になることがあります。

退職手当等の受取時期が重なる場合は、支払者、勤務先、運営管理機関、税務署などに確認してください。

企業年金は制度・規約を確認する

企業年金は、制度や規約、受取方法によって税務上の扱いが異なる場合があります。企業年金はすべて同じ所得区分になる、と一律に考えないでください。

確定給付企業年金などの一時金は、退職により支払われるものなど一定の場合に退職手当等とみなされることがあります。一方で、年金として受け取る場合には別の扱いになることがあります。

自分が加入している制度名、受取方法、一時金と年金の選択可否、規約上の条件を確認することが必要です。

自分で確認する項目

退職金、企業年金、iDeCoを整理するときは、金額だけでなく、受け取る年、対象期間、受取方法を一覧にして確認します。

  • 会社の退職予定日
  • 会社の退職金の支給予定日
  • 退職金の勤続期間
  • 企業年金の制度名
  • 企業年金の受取方法
  • iDeCoの通算加入者等期間
  • iDeCoの受取開始可能年齢
  • iDeCoを一時金、年金、併用のどれで受ける予定か
  • 過去に受け取った退職手当等の有無と支給年
  • 各制度で計算対象となる期間

次の行動

まずは、会社の退職金、企業年金、iDeCoを分けて、受取予定日、受取方法、対象期間を整理してください。

老後資金リスク診断では、退職金や企業年金を老後資金全体の見通しに反映して確認できます。ただし、税額や最適な受取時期を計算するものではありません。

確認したい項目が多い場合は、改善ポイント整理サポートの案内を見ながら、年金、退職金、生活費、受取時期を順番に整理してください。

免責・公式確認先

本記事は、退職金、企業年金、iDeCoの受け取りについて一般的な確認ポイントを整理したものです。個別の税額、受取時期の最適解、節税効果、金融商品の成果を保証するものではありません。

実際の判断は、最新の国税庁、iDeCo公式サイト、勤務先、企業年金の運営機関、税務署、税理士などへ確認してください。